竹取物語ゆかりの地に祀られる隠れたお社
伏見稲荷の千本鳥居といえばあまりにも有名。鳥居でできた朱のトンネルの先は奥の院とも呼ばれる奥社奉納所。奥の院の手水の横に眼をやると稲荷山の参拝道がさらに奥へ奥へと続いています。
慣れた足どりで参道を進む人々にまぎれて少し進むと左手に根上がり松さまのお社があります。根上がり松さまも有名なお社で参拝に向かわれる方が多くいらっしゃいますので、たいていの参拝人は根上がり松さまに向かわれるか真直ぐ参道を進んでいかれます。そのためかつい見落としそうになるのが根上がり松さまのお社から参道をはさんで向かい側の分かれ道。
竹林の静宮へと続くこの道、立札にはしっかり神宝神社と記されています。こちらの道は少し勾配があり階段も設えていませんから、参道というイメージではないかも知れません。そんなこともあって多くの参拝者が稲荷山の参道を歩いていてもこちらへ進まれる方はごくまれのようです。
ほぼ山道のような参拝道をゆくこと数分、やがて深い竹林に覆われて空気が変わることに気づきます。天に伸びる蒼々とした竹と木漏れ日の美しさは「竹取物語」ゆかりの地ならでは。その美しさに眼を奪われていると神寶神社の鳥居が眼前に現れます。
平安時代に創祀された稲荷山古来の重要奉拝所
鳥居をくぐると左右に配した地龍、天龍に守られた正面奥に神寶神社の本殿。平安時代初期に創祀され戦後再建されたこの本殿は、天照大御神様、稲荷大神様、十種神宝様を奉安し、稲荷神社本殿が稲荷山山頂に祀られていた頃から奉拝所として重要な祭祀を行っていたと伝わります。
神寶神社では国内最古の神器、十種神宝の御守が奉安されているとされており、“十種神宝”は、先代旧事本紀のなかで天璽瑞宝十種(あまつしるし みずたから とくさ)と記され霊力を宿す十種類の神宝です。
国家の盛衰も左右することができるほどの強力な霊力があるという神器にまつわるこの神寶神社は、これまであまり広く知られてはいませんでした。それでも神寶神社やその力のことをご存知の方は足しげく通われるため今では「パワースポット」として知られるようになりました。
衣の神さま龍頭大神
境内には本殿を中心に数社のお社が立ち並んでいます。それらは本殿前の狛龍、磐境、磊からなるその様は風水の循環を形成していて、「物事はそれぞれ自ずからなる営み」を意味するのだそうです。
そのお社のひとつ龍頭大神(りゅうずおおかみ)さまは山の地主神で、西陣織の横糸をかける金具を「龍頭」ということから「衣にまつわる守り神」とも伝わります。お社の横には荘厳な趣のある龍の像が鎮座しておられ、その龍がくわえている玉を手でまわしながら祈願をすると願いが叶いやすくなるのだそうです。
竹取物語の発祥地に祀られる磐境(いわさか)さま
本殿の最も奥に建つ竹の鳥居のお社。稲荷山では朱塗りの鳥居が主流のなかで竹の鳥居は珍しく目を引きます。それもそのはず、そこは磐境(いわさか)さまのお社で降臨神石(タケノコ)が祀られているのだそうです。
竹取物語の発祥地ともいわれているこの磐境さま、詳しい方々の間ではこの境内の中でもとくに大きく強い気を放ち、大きな力をお持ちの神さまがおられると言われています。磐境さまのお社から一直線上に稲荷山の一の峰があり稲荷山の神さまに通じる場所とされていて、稲荷山開山の頃からこのお社で多くの祈りを捧げられてきたと伝わります。神寶神社参拝の際は是非こちらで祈願したいですね。
中国より竹取物語に興味のある大学生から質問を頂戴しました
こんにちは、お忙しいところお邪魔してすみません。中国の大学生です、竹取物語に興味があります。神寶神社は竹取物語の発祥地といわれています、竹類は竹取物語のと同じですか、どんな竹ですか。ありがとうございました。
莉 様
■KATOからのご回答
初めまして。わざわざ中国からのご質問に感謝いたします。日本の文化や歴史がお好きですか?日本語がお上手ですね。^^
さて、ご質問の竹取物語の作者は不詳で、日本国内で竹取物語は「神話」として語られています。つまり真実かどうかは分からない作られたお話ということです。
ちなみに現在言い伝えられている発祥の地は日本各地に複数あります。それらは庶民の想像力と観光地ブームに乗った各地方自治体が創り上げたあまり根拠のないものになります。
また逆に実際の文献から読み解き、作者は京の都にいた貴族であろう推測から、専門家らが京都の近隣地を予想して算出した場所があります。神寶神社はそれに当てはまり、かぐや姫が貴族に持って来させた多くの秘宝を所有していることから、この地をモデルに書いた話なのではないか?ということです。つまりこちらも推測になります。
>竹類は竹取物語のと同じですか、どんな竹ですか?
竹の種類でしょうか?日本にも中国ほどではありませんがいろんな種類の竹が生えています。私は毎月こちらの竹林を眺めながら神社参拝しておりますが、普通の青竹になります。
かぐや姫が赤ちゃんの姿で入っていた伝説から通常より大きな竹を想像されているかも知れませんが、普通の直径10センチくらいの竹です。がっかりさせたならごめんなさい。^^;ちなみに現地の竹林の写真の添付をしておきますね。
神話に思いを馳せ、想像を巡らせるのは楽しいですね。 神寶神社の竹林は斜面一面に竹が生えており、間伐(掃除)も行き届いているので大変ロマンチックです。一筋の風でも吹いたら、一瞬異次元にいるような不思議な気持ちがしますよ。
商いと芸能にご利益、底津岩戸社
本殿のさらに奥には天鈿女命(あめのうずめのみこと)を祀られる底津岩戸社(そこついわとしゃ)が鎮座されています。商売と芸事にご利益があると伝わることから経営者や芸能人から多く信仰されているお社です。
また白菊大神とも呼ばれる布留社(ふるのしゃ)さまは、白菊大神、白髭大神、白竜大神を祀られています。なんとこちらのお社はかつて京都五条通にあり、道路拡張の際にこの地に遷宮されたのだそうです。大和布留社とは地下水脈でつながっていて伝説では、白い布がこの地に流れ着いてきたと伝わります。“布が留る”ことから布留社(ふるのしゃ)となったのだそうです。
美しい千代紙の叶雛に願いを託す
日本古来の千代紙を人の形に折った「叶雛(かなえびな)」。内側に願いと名前を書いて奉納し祈願します。いつ来ても多くの数が奉納されているこの叶雛、仕事や金運、家内安全などそれぞれおもい思いに願いを記されています。色とりどり多くの柄のなかから好みの雛を選ぶのも、かなえ雛奉納の楽しみのひとつです。