



一年の豊作を祈願する神事

田植祭は伏見稲荷大社で毎日神前にお供えするご料米の稲を神田(しんでん)に植えて一年の豊作を祈願する神事です。苗は毎年4月から準備されており、籾種から育った早苗をこの日に神田に植え替えます。
汗衫姿(かざみすがた)と呼ばれる衣装(平安時代の肌着)をまとった神楽女(かぐらめ)が優雅な「御田舞」(おたまい)を舞う中、茜色のたすきをかけ菅笠姿の約15人の奉耕者である早乙女が苗を植えます。
始まりは戦国時代から安土桃山時代の1517年だそうで、戦乱などで途中途絶えましたが昭和天皇即位記念事業の一つとして再び行うようになったそうです。
米価への関心が高まった令和7年の「政府備蓄米放出」

今年ほど、農業や米作り、農家さんへの感謝など稲作への関心が高まった年はありません。
令和6年より発生した米不足からくる価格高騰により、社会問題として大きく取り上げられるようになった令和の米騒動。一時期はスーパーで5キロ5000円を超える高価格が付けられ、もはや庶民の手には入りがたいものに変わってしまいました。
この原因は天候不順やコロナ禍からの需要回復などが引き金になり、従来のJA経由の流通が直接取引へと変化し、米の奪い合いが発生したためだと言われています。結果、長期にわたり価格上昇と流通の混乱が継続して起こることになりました。それを鎮めるため、政府備蓄米を放出し、5キロ2000円に下げて解決となりました。
問題と原因はさておき、今後私たちの主食である米づくりをどうやって維持していくのか、政府と国民が一体になって考えていくきっかけになったのは大きな進歩です。そして稲作発祥の地、伏見稲荷では何食わぬ顔の神様が、ちゃんとしなさいよと見守ってくださっているように思います。
お田植え祭の風習
お田植え祭は日本各地で古くから行われており、その風習は地方や神社によりさまざまです。ある地方では人形を畦に立て神様の依り代にしたり、またある神社では馬や牛の被り物をした人々が田んぼに入り暴れ回り邪気払いをすることもあります。伏見稲荷大社のように雅楽を神様に納める事も多く、人間国宝による能楽が奉納される神社もあります。 日本三大お田植と祭としては千葉県の香取神社、三重県志摩の伊雑宮(いざわのみや)、大阪の住吉大社のお田植え祭が有名です。

こうした風習は予祝芸能とも田遊びとも呼ばれ、また神事とも祭事とも言われますが一般的にお田植祭と総称されています。全国に伝承されていることから、日本人と稲作の繋がりの深さが窺えます。
御田舞(おたまい・おんだまい)とは
田植えの諸作業を芸能化したもので田の神、穀霊に豊作を祈る祭事の一つです。同じく関西で有名な和歌山県かつらぎ町の「花園の御田舞」は鎌倉時代から田遊びの一つとして行われて来た古式ゆかしい民俗芸能であり、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
最近の気象変化による新しい田植祭?

京都の中部、福知山市では由良川の氾濫による水害からの復興行事として2015年よりこの時期、「田んぼラグビー」が開催されています。過去に何度も甚大な被害を受けた水田を使って、水害に負けない元気な福知山をアピールしようと始まったそうです。

こちらは田植祭とは呼ばれていませんがこれも気象の変化から地域復興、ゆくゆくは観光誘致につながり、時代の移り変わりとともに新しい予祝行事になって行くのかも知れません。
2023年の田植祭のようす
2023年6月10日、伏見稲荷大社にて田植祭が行われました。この時期は梅雨時で毎年曇天か小雨になるのですが今年も曇り空を免れることはできませんでした。
伏見稲荷大社の田植祭は13時から本殿で神事が行われ、実際に田んぼに入って田植えをするのは14時から。約1時間ほどで田植えが終わると土曜日だったせいか、本殿境内はご覧の通り歩くのも困難な人出になっていました。
