生きることなんて、どないもない。

眼力さんの守役、服部さんが見た今、昔。暮らすこととは、生きることとは、そして生きることとは。

眼力さん 生きることのコツ
京都伏見の清らかな場所 眼力さんの手水は石清水

生きることなんて、どないもないことですよ。

眼力さんにお参りするようになるまでの私は、何かの宗教に入っていたわけでもなければ、特別信仰する神様があるわけでもないごく普通の平々凡々と生きる者でした。

眼力さん周辺は草花の宝庫

それが数年前、とある方にからご紹介いただいたことをきっかけに眼力さんへ度々足を運ぶようになると、お詣りの度に眼力さんの守り役である服部さんから色々なお話を伺うことが楽しみになっていました。

服部さんの話す何気ない内容は、不思議なことにそれまで自分が気付かなかったことに気付かされることが多く、時には自分が抱えている問題解決への糸口となる事柄が含まれていて、それにより事態が大きく好転したということも少なくありません。服部さんとの会話は話す相手の状態にシンクロするのでしょう。

眼力さんをお詣りする方々のなかには同じような経験をされる方が多いことを知り、私の知る限りの服部さんのお話をさせていただくことにしました。


●第一話●

どないもない、どないもない。

それは丁度このホームページを作らせてもらうにあたり、眼力さんで取材をしていたときのことです。お社を撮影していると、その周辺に生息する見たこともない珍しい草やコケなどを上手に寄せ植えして作った服部さん特製のミニ盆栽が目に止まりました。

「服部さん、このコケ何て言うんですか?」

「あ、それはあそこに生えているコケですねん!」

眼力さんの盆栽

盆栽を指さし質問した私に、服部さんはそのコケが生えている所を教えようとしていきなりぱーっと走り出されました。私は盆栽を持ったまま服部さんについて走ったのですがそのときその中の石をころんと落としてしまい大切な盆栽を壊してしまいました。

「すみません、申し訳ないです」

盆栽はとても多くの時間と手間をかけて育てる物です。それを知っていただけに何という大変な事をしてしまったんだろうと落ち込むのと同時に何回も謝る私に、服部さんが笑顔で言ってくれた言葉がありました。

「そんなん、どないもないことですよ」

「どないもない、どないもない」

どないもないとは関西の方言で「どうと言うことはない、問題ない」ということです。落ち込む私に優しい言葉をかけてくださった服部さん。きっと何年も愛情をかけて育てて来た盆栽です。本当は“どないもない”ことは無いはずなのに、私は服部さんに許してもらった上に励まされてしまいました。

眼力さんのこけ

今でもあの時の服部さんの“どないもない、どないもない”と言う言葉が心に残っていて、落ち込みそうになったときに思い出します。それはまるで昔、子供の頃に聞いた祖母や母からの優しい言葉のように、思い出すと今でも胸が温かくなる言葉です。

悪気のない過ちを犯した者に対して、服部さんのように思いやりと懐の深さをもって優しく許してあげられる人になれるよう心がけたいですね。許された人は怒られるよりもかえって深く反省し、その反省はやがて感謝と信頼に変わることでしょう。

眼力さんにお詣りで、生き方のきっかけを

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